
福岡県内で12棟400戸の高齢者向け賃貸を運営
■空室物件を活用し満室に導くノウハウを提供
亀岡 高齢者向けの賃貸住宅の運営、コンサルティングを行っていると聞きました。
落水 当社はもともとは賃貸住宅の管理会社です。管理物件は、約600戸でその半数の約300戸を高齢者向けの賃貸住宅として運営・管理しています。
亀岡 高齢者向け賃貸の運営を始めたきっかけは何かあったのですか。
落水 きっかけは、当社の店舗へ、あるケアマネージャーが90歳の高齢者を入居させてくれる賃貸物件を探しに来たことです。高齢であることを理由に入居を断られ続けワラにもすがる思いで当社にいらっしゃいました。
亀岡 高齢者の入居を拒む管理会社、オーナーは多いと聞きます。しかし、御社はそこに目を着けたのですね。
落水 3年前から高齢者向け賃貸住宅『安寿の郷』を運営しています。高齢者サポート介護サービス選択型マンションとなっています。
亀岡 介護サービス付き賃貸は最近増えていますが、選択型とはどういうことでしょうか。
落水 必要な時に自分に合ったサービスを選んで受けることができるのが選択型です。高齢者が安心して暮らせる住宅を提供していくことが私たち、不動産会社の使命だと思います。
亀岡 しかし、そういった方の条件に合った住宅はそうありません。また、あったとしても賃料が高額で一般の高齢者が入居できないケースもあるように感じます。
落水 『安寿の郷』は賃料も考慮しています。年金暮らしの方でも入居できる家賃設定にしております。現在、福岡県内で12棟運営しておりますが、家賃設定は3万5000円~6万円と一般賃貸相場とほぼ同じです。
亀岡 好意的ですね。先ほど入居者が必要なときに必要なサービスを受けられるとおっしゃっていましたが、どのような仕組みになっているのでしょう。
落水 建物の構造によっても異なりますが、基本的にはテナントと食堂スペースを設けます。テナントには在宅診療が可能な内科医院やヘルパーデイサービス、福祉用具レンタルなど高齢者サポートを行える企業に入ってもらいます。
亀岡 建物内でいつでもケアが受けられるというわけですね。施設は新築が多いのですか。
落水 全国で400万戸の賃貸住宅が空室といわれています。実際に入居募集獲得が困難な状況も肌で感じています。一方で民間企業が運営する、安心で安価な高齢者向け賃貸住宅は不足しています。このような状況の中、余っている賃貸住宅を利用しない手はないと考えたのです。また、建物建築に費用をかけないことで賃料を抑えることもできると考えました。
亀岡 これだけ空室問題が深刻化していますからおもしろい取り組みだと思います。
落水 選択型に対し、高齢者サポート自立応援ヘルパー住み込み型賃貸マンションの運営も行っています。これは、1棟丸ごとではなく空室のみを高齢者向け賃貸住宅にします。同じ棟内にヘルパーを住み込ませることで高齢者の生活をサポートします。夜の見回りやトラブルが起こったときにヘルパーが駆けつける仕組みです。
亀岡 では例えば若い入居者が入っているマンションに高齢者が入居するということもあるわけですね。
落水 はい。弊社の物件も混在型が多いです。不安要素を取り除くことでこのような取り組みが可能になっています。
亀岡 昔に比べ元気な高齢者が多いです。その高齢者と簡単な仕事をマッチングさせるサイトがあれば面白いと思いませんか。バイト代は高額なくていいんです。お小遣い程度の金額で。仕事をするとこで高齢者のやりがい、生きがいにつながっていきます。
落水 弊社では建物内に24時間当直がいるのですが、元気なアクティブシニアの方に依頼しています。みなさん元気で、まじめで、なにより仕事を楽しんでいます。
亀岡 高齢者とネットをうまく組み合わせることが今後、需要になってきます。
落水 今の高齢者の方はパソコンに不慣れで、お子さんがパソコンを使って住宅を探しています。しかし、あと5年もすれば60歳以上の方でも、確実にパソコンの操作を簡単行える世代になります。今からの準備が必要です。当社では、『安寿の郷』の入居募集をする際には『Ju(寿)らいふタウン』というサイトを利用しています。これはリクロス(福岡県福岡市)というシステム開発会社が、運営しているのですが、弊社は、不動産、管理会社として開発に携わっています。
亀岡 どのようなサイト、システムなのでしょう。
落水 入居希望者と高齢者施設のマッチングサイトです。他に入居希望者が介護サービスを選択し、家賃、経費、介護サービスのシミュレーションをオンライン上で簡単に行える『安心お見積もりシステム』を導入しています。また、リクロスでは、システムの提供だけではなく賃貸住宅の空室を利用し、高齢者向けの住宅を運営するノウハウを提供しています。
亀岡 実際にどのような取り組みを行っているのですか。
落水 2010年8月に不動産管理会社向けに事業説明会を開催しました。当日は参加費が8,000円にもかかわらず、110社120名が集まりました。2011年の2月下旬東京でも同じ事業説明会を行う予定です。
亀岡 東京で開催するということは全国でフランチャイズ展開を考えているということですか。
落水 フランチャイズとは少し異なります。同じ考えを持ったパートナー企業を全国を全国に増やすのが目的です。当社もリクロスのパートナー企業の1社です。パートナー企業になった管理会社に運営ノウハウなどを提供し、『安寿の郷』を増やしていきたいと考えています。
亀岡 現在、福岡県以外で実績はあるのですか。
落水 まだですが、年明けに埼玉県羽生市で鈴木ゆり子さんが『安寿の郷』を手がける予定です。それ以外にも千葉県、岐阜県、愛知県名古屋市、大阪府、京都府、愛媛県、新潟などが『安寿の郷』の運営を開始していく予定です。パートナー企業は25社です。
亀岡 2011年は『安寿の郷』を何棟運営予定ですか。
落水 1年間で全国で20棟は運営開始させて行きたいです。
亀岡 これからの社会には元気な高齢者のために賃貸住宅は必要です。また、システムを絡ませた展開は楽しみです。これからもがんばってください。
落水 本日はありがとうございました。